小学校英語必修化の概要と変更点

2020年度から全面実施された小学校英語必修化により、日本の英語教育は大きく変わりました。変更後一定期間が経過し、小学校での実情はどうかと気になる一方、「うちの子は大丈夫だろうか」「何か準備が必要なのでは」と心配されている方もいらっしゃると思います。

まずは学習指導要領の変更点について確認です。

新学習指導要領での主な変更点

小学3・4年生：外国語活動の導入

・年間35単位時間（週1コマ程度）

・「聞く」「話す」を中心とした活動

・成績評価は行わず、活動への取り組み状況を評価

小学5・6年生：外国語科として教科化

・年間70単位時間（週2コマ）

・「聞く」「話す」に加えて「読む」「書く」も導入

・通知表での成績評価が開始

・中学校への接続を意識した語彙・表現の習得

これまでの「外国語活動」は小学5年生からでしたが、新制度では3年生から段階的に英語学習が始まります。特に大きな変化は、5・6年生で英語が正式な「教科」となり、国語や算数と同様に成績がつくようになったことです。

子どもたちが学校で身につける英語力

小学校卒業時の目標レベル

文部科学省が設定した小学校卒業時の目標は以下の通りです：

語彙力

・600～700語程度の単語を理解・使用

・身近な話題に関する基本的な表現を習得

コミュニケーション能力

・自分のことについて簡単に話せる

・相手の話を聞いて理解し、簡単な応答ができる

・アルファベットの読み書きができる

・身近な単語や文を読んだり書いたりできる

これらの目標は、中学校英語への円滑な接続を意識して設定されています。従来の中学校1年生の内容の一部が小学校に移行したため、中学校ではより高度な内容から学習が始まることになります。

学習内容の具体例

3・4年生の外国語活動

・自己紹介（名前、年齢、好きなもの）

・数字、色、形、動物の名前

・天気、時刻、曜日

・簡単な買い物ごっこやゲーム活動

5・6年生の外国語科

・より詳細な自己紹介と他者紹介

・日常生活に関する簡単な会話

・学校生活、家族、友達について話す

・簡単な物語の読み聞かせと理解

・アルファベット、基本的な単語の書き取り

家庭でできる英語学習サポート

1. 英語に親しむ環境作り

日常的な英語の取り入れ 家庭で無理なく英語を取り入れる方法をご紹介します：

・英語の歌やアニメを日常的に流す

・英語の絵本を一緒に読む時間を作る

・日常的な挨拶を英語で行う（Good morning! See you later!）

・英語の数字で数を数える習慣をつける

ポジティブな声かけ 子どもが英語に取り組む際は、完璧さよりも「チャレンジする姿勢」を褒めることが大切です。「上手に言えたね」「一生懸命取り組んでいるね」といった声かけで、英語学習への前向きな気持ちを育てましょう。

2. 基礎的なフォニックス学習

フォニックス（音と文字の関係）を理解することで、読み書きの基礎が身につきます：

家庭でできるフォニックス活動

・アルファベットの音を意識した発音練習

・文字と音を結びつけるゲーム

・韻を踏んだ単語遊び（cat, hat, batなど）

・フォニックス教材を活用した学習

3. 英語での読み聞かせ

読み聞かせは「聞く力」と「語彙力」を同時に育てる効果的な方法です：

年齢別おすすめアプローチ

・低学年：絵が豊富で繰り返し表現の多い絵本

・中学年：少し長めのストーリーで語彙を増やす

・高学年：子どもの興味に合わせたジャンルの本

保護者の皆さんが英語に自信がない場合は、音声付きの教材やオンラインリソースを活用することをおすすめします。

学校教育との効果的な連携方法

1. 学校の学習内容との連動

担任の先生とのコミュニケーション

・授業参観で英語の授業を積極的に見学

・家庭学習について先生と相談

・子どもの英語学習の様子を共有

宿題や復習のサポート

・学校で習った単語や表現を家庭で復習

・英語の宿題に一緒に取り組む

・学習内容を日常会話に取り入れる

2. 評価基準の理解

小学校の英語評価は以下の観点で行われます：

知識・技能

・語彙や表現の理解と使用

・文字の読み書き能力

思考・判断・表現

・場面に応じた適切な表現の選択

・相手を意識したコミュニケーション

主体的に学習に取り組む態度

・積極的な参加姿勢

・異文化への関心と理解

これらの評価基準を理解することで、家庭でも適切なサポートができるようになります。

よくある不安と解決策

Q1: 親が英語を話せないのですが、サポートできるでしょうか？

A: 保護者さまが英語を完璧に話せる必要はありません。大切なのは子どものチャレンジを応援し、一緒に学ぶ姿勢を示すことです。音声教材やオンライン学習ツールを活用すれば、親子で楽しめる英語学習が可能です。

Q2: 子どもが英語を嫌がるようになったらどうすれば？

A: 無理強いは禁物です。まずは英語が使われている場面を楽しい体験として印象づけることから始めましょう。好きなキャラクターの英語版アニメを見たり、英語の歌を歌ったりと、遊びの要素を取り入れることが効果的です。

Q3: 学校の授業だけで十分でしょうか？

A: 学校の授業は基礎的な内容が中心です。より確実な英語力を身につけるためには、家庭での継続的な学習が重要になります。特に「聞く」「話す」機会を増やすことで、学校で学んだ内容がより定着しやすくなります。

Q4: いつから本格的な英語学習を始めるべき？

A: 小学校3年生から外国語活動が始まるため、その前から少しずつ英語に慣れ親しんでおくことをおすすめします。ただし、年齢に関わらず「始めたい」と思った時がベストタイミングです。

効果的な学習環境の整備

デジタル教材の活用

現代の英語学習では、デジタル教材が大きな役割を果たします：

おすすめデジタルリソース

・英語学習アプリ（ゲーム感覚で学べるもの）

・YouTube の英語学習チャンネル

・オンライン英会話サービス

・インタラクティブな英語教材サイト

活用時の注意点

・スクリーンタイムの管理

・子どもの年齢に適したコンテンツ選択

・受動的な視聴ではなく、アクティブな参加を促す

継続的な学習習慣の構築

無理のない学習計画

・毎日10-15分の短時間学習

・週単位での学習目標設定

・子どもの興味・関心に合わせた内容選択

・達成感を味わえる小さな目標の設定

モチベーション維持の工夫

・学習の成果を記録する（学習ダイアリーなど）

・家族で英語を使う時間を作る

・英語でできるようになったことを褒める

・定期的な振り返りと目標の見直し

まとめ：子どもの未来を見据えた英語教育

小学校英語必修化は、グローバル社会で活躍できる人材育成を目指した重要な教育改革です。学校での学習を基盤としつつ、家庭でのサポートを組み合わせることで、子どもたちはより確実な英語力を身につけることができます。

重要なポイント

1. 焦らず段階的に: 子どものペースに合わせた無理のない学習
2. 楽しさを重視: 遊びの要素を取り入れた継続可能な学習
3. 実践的なコミュニケーション: 学んだ内容を実際に使う機会の創出
4. 家庭と学校の連携: 一貫性のある学習環境の構築

英語学習は長期的な取り組みです。完璧を求めるのではなく、子どもが英語に親しみ、コミュニケーションの楽しさを感じられる環境を整えることが何より大切です。

保護者さんの不安は理解できますが、適切なサポートがあれば子どもたちは確実に英語力を伸ばしていけます。まずは小さな一歩から始めて、お子さんの英語学習を温かく見守ってあげてください。

 

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